朽ちて行く日常、舞う花びら~マリア・ティーポ「ショパン・夜想曲選集」

1931年イタリア生まれのこのマリア・ティーポというピアニストのことは全く知りませんでしたが、レコード芸術2月号の新譜月評での紹介で興味を持ち、アマゾンで取り寄せてみました。

極めてゆっくりとしたテンポで弾かれる彼女の演奏は、まさに「ノクターン」という言葉そのもののように、物憂く儚げで、その醸し出す夢と寂寥感と美しさは、大変素晴らしいものでした。
(この寂寥感と美しさは、僕にはグールドの弾くブラームスの間奏曲に似ているように思われます。)

昨夜この夜想曲を聴きながら、岩波文庫の『読書という体験』に収められた田中優子さんのエッセイを読んでいたら、「芭蕉七部集」に触れて、
「朽ちて行く日常、そこに舞う花びら この取り合わせが、近世文学なのである」
とあり、まさにマリア・ティーポの夜想曲の寂寥感のもたらす「美」は、「朽ちて行く日常に舞う花びら」のような音楽であるなあ、と感じ入りました。

これからも折に触れて聴きかえすアルバムになりそうです。

ショパン:夜想曲(選集)
ティーポ(マリア) / / 東芝EMI
ISBN : B000JLSUQQ
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# by maru33340 | 2007-03-03 11:25 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(0)

『美の壷』(万華鏡)3月2日放送

いつも楽しみにしている『美の壷』。
今日3月2日の放送は「万華鏡」。
これは驚きました。
子供の頃のおもちゃの万華鏡しかしらなかった僕には、万華鏡がこんなに心ときめかす「美」の世界を持っていたとは・・・
全くの認識不足でした。
放送中、しばしその夢幻の世界に酔いました。
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# by maru33340 | 2007-03-02 22:43 | TV | Trackback | Comments(2)

『チボー家のジャック』(マルタン・デュ・ガール、山内義雄訳)

出張途中で父の訃報を聞き、葬儀を終えて、葉山~大阪~富山と移動し仕事に戻りましたが、やはり少し疲れが出てしまったようで、持病の扁桃腺が腫れ熱を出してしまいました。
期末の多忙時ですが、声も出なくなってしまい、今日は会社を休みました。

午前中は、ほとんど起き上がることも出来ませんでしたが、午後から、アマゾンで頼んでいた『チボー家のジャック』(マルタン・デュ・ガール、山内義雄訳)を横になりながら読み始めました。
『チボー家の人々』は父の愛読書で、僕も中学生ぐらいのときに、買ってもらった白水社の5巻本を読み始めましたが、途中で挫折したまま忘れていました。
父の逝去で、突然この本の事を思い出し、ジャックを中心にした抜粋版であるこの『チボー家のジャック』を頼んでいたのです。

今、第一部まで読み終えましたが、内容は全く忘れていました。
しかし、以前少し冗長に過ぎるなあと思っていたのが嘘のように面白く、山内義雄さんの少し古風な文章も懐かしく、物語の世界にどんどん引き込まれていきました。
これは、今更僕が言うのもおかしいのですが、大変な名作でした。

そして、夕方の光の中で、一人で部屋で『チボー家』を読みながら、
「本を読む事を通して、父の読書経験を(おそらく50年以上の時を隔てて)僕は追体験している。
この経験を通して、父は僕の中で生き続けている。
これからも、本を読む事を通して、父の心は生き続ける。」
という思いが突然浮かんできました。

突然の父の死をどうしても自分の中で受け入れられずもがいていた心に、少しだけ光が射してきたように感じられる瞬間でした。

チボー家のジャック(新装版)
マルタン・デュ・ガール / / 白水社
ISBN : 4560047766
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# by maru33340 | 2007-03-01 18:58 | お勧めの本 | Trackback | Comments(1)

何事もなく時は過ぎて・・・

期末の多忙時のため、父の葬儀の後、少し早めに仕事に戻り、今日から出社しました。

多くのメンバーからお悔やみの言葉をもらいましたが、それぞれの仕事に戻り、僕自身も明日の会議の資料の作成に追われて一日を過ごしましたが、ふと、「まだ父の逝去から4日しかたっていないのだな。」と思うと、どういうわけかとても複雑な心境になり、「こんなに早く何事もなかったかのように現実に戻ってしまっていいのだろうか。」という思いに、少し愕然としてしまいました。

日常や現実はとても大切なものであり、そこに戻らなければ生きていけないことは重々承知しながらも、自分自身が父の突然の逝去を受け入れられておらず、そんな思いをいだいたまま、何事もなかったかのように日々の生活に身をゆだねてしまっていていいのか、そう思うと、しばらく仕事を休んで、せめて自分自身が父の死を受け入れられるまで旅をするような時間が必要なのではないか、などと考えてしまいます。

もちろん会社から給料をもらっている身で、甘えているといわれればそれまでであり、誰もがそのような時を受け入れ、乗り越えているのだからとも思いますが、このまま時の過ぎ行くままに記憶が薄れていくことを許してしまっていいものか、わからなくなってしまいました・・・
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# by maru33340 | 2007-02-27 21:40 | Trackback | Comments(2)

父、逝去す

今年の1月30日に突然倒れ入院していた父の容態が急変し、2月23日未明逝去しました。
享年79歳でした。

病院に運ばれた翌日大量の吐血をし、その時点ですでに末期の胃癌でしたが、吐血したときに肺に血液が入り、それが原因でおきた肺炎による死でした。

研修先の葉山で弟より逝去の連絡を受け、朝一番の新幹線で大阪まで戻り、その日の夜通夜、24日に告別式と急な葬儀になったため、なんだか全く現実感がないまま一連の儀式を終えて、今日富山に戻って来ました。

父は元来筆まめな人でしたが、昨年4月に僕が富山に単身赴任してきてからは、「寂しい思いしているだろう。」と、ちょくちょく葉書をくれていました。
今日、日本酒を飲みながら、父からの葉書を読み返していたら、誕生日の手紙が一通、葉書が二十五通ありました。
母には「もう書くことがないなあ。」などと言いながら、せっせと書いていたようです。

父の最大の趣味が読書であったため、僕が読み終えた本が溜まるとダンボールで実家に送っていたのですが、父はその本を、著者の名前順、出版社順などに綺麗に並べて、読み終えると葉書で感想を書いて送ってきてくれていました。
僕もまた最近読んだ感想などを書いては父に葉書で送っていたので、母には「息子が親友になったようで嬉しい。」と語っていたそうです。

富山と大阪と遠く、家族は埼玉に居るため、昨年は2回しか大阪に帰省出来ず、もっとちょくちょくと帰って話をしていれば・・・と悔やんでも遅く、それでも自分の最大の理解者が父親であったことの幸福を思い、たとえ父の体は滅してもその魂は僕や僕の子供たちに引き継がれていることを信じて、これから歩いていきたいと思っています。
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# by maru33340 | 2007-02-26 21:42 | Trackback | Comments(7)

『会社の値段』(森生明)

昨日観た「ハゲタカ」があまりに面白かったので本屋で早速原作を購入。
合わせて作品の基本的な背景を押さえておくための入門書としてこの『会社の値段』(森生明)を購入し、半分まで読みました。
とてもわかりやすく目から鱗が落ちるような本でした。
最近またサッポロホールディングスへの外資による買収など発生してきており、その背景を知るためにもこれは読んでおいて良かった本でした。

会社の値段
森生 明 / / 筑摩書房
ISBN : 4480062890
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# by maru33340 | 2007-02-18 22:34 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)

土曜ドラマ「ハゲタカ」を観る

今日から始まった土曜ドラマ「ハゲタカ」を観る。

これはすごいドラマでした。
折からサッポロビールを巡るM&Aが話題になっている時だけにテーマもアクチュアルであることに加えて、役者、カメラ、音楽、ストーリーどれをとっても緊張感に満ちた作品になっていました。
このペースが6作最後まで継続すればドラマ史に残る傑作になるのではと思います。
このドラマで初めて大森南朋という役者を知りましたが、どこか脆さと狂気を秘めた演技に魅せられました。
少し調べた所あの麿赤児の息子であるとのこと。
さもありなん・・・

追伸
ドラマの冒頭、鷲津がプールに浮かんでいるのを、プールの中で下からカメラが追うシーンは映画「サンセット大通り」へのオマージュと見ました。
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# by maru33340 | 2007-02-17 22:50 | TV | Trackback | Comments(2)

『リーダーシップの旅 見えないものを見る』(野田智義、金子壽宏)

少し変わったリーダーシップの本でした。
マネジメントとリーダーシップの違いにこだわり、リーダーシップを旅に例えて、いわゆる「すごいリーダー像」に疑問を投げかけます。
共著の形が僕には少し読みづらかったのですが、随所に斬新なリーダー像が示されます。

個人的には、四書五経の一つ『大学』の書き出し、
「大学の道は、明徳を明らかにするにあり」
を引いて、
「リーダーが学ぶべきことは「徳」を身につけること」であり、「徳とは、自己の最善を他者につくすこと」であるという言葉に、少し迷いを解く鍵を見つけたように思います。

リーダーシップの旅 見えないものを見る
野田 智義 / / 光文社
ISBN : 433403389X
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# by maru33340 | 2007-02-17 20:23 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)

『心もからだも「冷え」が万病のもと』(川嶋朗)

先日来、左足のふくらはぎから太腿にかけて痛みが走り不自由をしていた所、家人より「それは冷えからきているので、暖めると良い。」と言われて、しぶしぶながら股引とレッグウオーマーをつけていた所、ほんの2日程で、ほとんど痛みがなくなり、散歩も平気になりました。

「なんだかなあ・・・」と思っていた時に、この『心もからだも「冷え」が万病のもと』(集英社新書)という本を見つけて、「まあ参考にはなるかな。でもいまはやりの民間療法かな。」などと軽い気持ちで読み始めた所、どうしてなかなか文章も説得力に富んだ信頼できる本でした。
著者の川嶋朗さんによれば、
「肩凝り、腰痛、頭痛、がん、高血圧、生活習慣病、うつなど精神的な病気にいたるまで、私には冷えが原因と考えられる。」
とのこと。
普段なら「ふーん、そんなものかなあ。」と軽く読み流すのですが、自分の体が暖めることによって改善されたばかりでもあり、少し実践してみようか、という気になりました。

心もからだも「冷え」が万病のもと
川嶋 朗 / / 集英社
ISBN : 4087203786
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# by maru33340 | 2007-02-17 14:16 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)

『司馬遼太郎の「場所」』(松本健一)

父の容態は変わらず、肺炎の悪化を阻止するため人工呼吸器で鎮静剤を投与している日が続いています。
鎮静剤のため依然話すことは出来ません。

人工呼吸器を継続すると細菌による感染の危険性があるとのことで、今日、気管支切開により気管から直接酸素を送るための手術を実施したのを見届けて、これ以上仕事を休むこと出来ず、富山に戻ってきました。

列車の中で、松本健一の『司馬遼太郎の「場所」』を読了。
中学生の頃、父の本棚にあった司馬遼太郎全集を拾い読みしたことを思い出しながら、この本を読み終えました。
もう一度この松本さんの刺激的な司馬遼太郎論について父と語り合いたいと思いながら・・・


司馬遼太郎の「場所」 増補
松本 健一 / / 筑摩書房
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# by maru33340 | 2007-02-14 23:18 | お勧めの本 | Trackback | Comments(0)

音楽・本・映画などについての私的な感想


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