米澤穂信の小説にはまる

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少し前、NHKのドラマ『満願』が素晴らしくその原作を読んで、後れ馳せながら米澤穂信という書き手の力量に驚いた。

最近読了した一冊が『真実の10メートル手前』という短編集。

太刀洗万智というフリージャーナリストを主人公とした作品は、多彩な持ち味のミステリーでありながら、「報道とは何か」「真実とは何か」という問いかけも鋭く単なる謎解きを超えた深い読後感が残る。

同じ主人公による長編『王とサーカス』は2001年に実際に起きた王宮事件を背景とした壮大な物語で読みごたえがあった。

いやあ、米澤穂信という作家、ただ者ではありません。
しばらくこの人の作品を追いかけることになりそうです。
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# by maru33340 | 2018-09-15 11:05 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)

秋風先生かく語りき

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NHKの朝ドラ『半分、青い』は前半は快調で毎朝楽しみに見ていた。

ところがすずめが漫画家をやめて秋風羽織が出なくなってから、忽然とつまらなくなり一時は見るのもやめてしまった。
すずめが東京から岐阜に戻ってからはまた何となく見始めたけどドラマとしては完全に破綻していて、ほぼ惰性でつけている感じ。

だから友人から『秋風羽織の教え』という本が出たと聞いた時は、買おうかどうか少し迷ったけれど、ちょっと酔っていたこともあり、気がつけばAmazonで頼んでいた。

昨日本が届きパラパラと眺めていたら、なかなか心に響く台詞が所々にあった。

例えばこんな言葉。

「人生とは、結局、その時々で自分が何を感じ、どう考えていたのか、の連続です。楽しい時間ばかりだと、それはそれで幸せだろうけれど、豊かな人生だとは私は思わない。むしろ、苦しいこと、つらいこと、いろいろな思いのバリエーションがあったほうが、楽しい時間をよりリアルに感じられる、そういうものだと私は思います。
だから、どんな時間でも、決してムダではない。あの頃のことは忘れてしまいまい、汚点だ、と思うような時間でも、なかったことにせず、しっかり抱きしめて、慈しんであげたほうがいい。それがあなたの人生をより豊かなものにします。」

しかしまあ、こんな良い台詞を書けるなら、北川悦吏子さんは、もっと良い脚本が書けるのではないかと、私なんかは思います。
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# by maru33340 | 2018-09-12 21:16 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)

秋の夜はフォーレの音楽を

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今日は昼間はつかの間の青空が見え、陽が落ちると窓外からは鈴虫の鳴き声が高く聞こえている。

こんは少し淋しい秋の夜は久しぶりにフォーレのヴァイオリン・ソナタが聴きたくなり、棚からこんなアルバムを探しだしてきた。

初めてフォーレの音楽の魅力に気づいたのは大学生の頃。

渋谷の名曲喫茶「らんぶる」で聴こえてきた、いつ果てるとも知れぬ息の長い旋律がアラベスクのように絡まる弦楽四重奏曲に心奪われ、それがフォーレの弦楽四重奏曲だと初めて知った。

それまでマーラー熱に浮かされたように、明けても暮れてもマーラーの音楽ばかり聴いていた僕には、フォーレの音楽は全く異次元の音楽だった。

以来フォーレの音楽は僕の宝物になった。

今日久しぶりに聴き、フォーレの音楽はまるで飛翔する魂のような音楽だなあと思い、プルーストがその音楽を愛したのもむべなるかなと改めて感じ入りました。
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# by maru33340 | 2018-09-09 20:38 | お勧めの本 | Trackback | Comments(6)

藤田の肉声を聞き救われるような思いがしたこと

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今日夕方偶然テレビをつけNHKの番組『よみがえる藤田嗣治』を見た。
とても良い番組だった。
何より良かったのは藤田が晩年(亡くなる二年前)テープレコーダーに吹き込んだ肉声を聞けたこと。

フランスに居ながら落語や浪曲のレコードを聞くことを楽しみとしていた藤田は、おそらく事前に丁寧に台本を書いて芝居仕立てでラジオ番組を模して実に楽しげに語っている。

内容は藤田が晩年過ごしたアトリエに死神が訪ねてくる所から始まる。
藤田は「自分にはまだある御堂を完成するという仕事が残っているからもう少し待ってくれないか」と頼む。
死神は彼の希望を聞き入れ「それじゃあ爺さん元気でな」と言って去っていく。

藤田の人生を思うと前半のパリでの華やかな活躍と戦時中戦争画を書いたことで戦後様々な誹謗中傷にさらされ、日本を追われるようにしてパリに渡り、二度と祖国に帰ることなくフランスで亡くなった悲劇の画家というイメージがある。

もちろん藤田の心中には度しがたい怒りと悲しみがあったと思うけれど、残されたテープの中の藤田は、天から自分が与えられた使命をまっとうする悦びに溢れ実に生き生きと楽しげだ。

藤田の肉声を聞きながら「ああ、藤田は決して怒りと悲しみの中で祖国を恨みながら生きていただけではなく、誰より画家としての自分の人生を楽しんでいたのだ」と感じ、救われるような気持ちになった。

藤田はランスの聖堂を完成した一年後その波乱の人生を終えた。

(追記)
ちなみに明日9月9日朝9時から放送予定の「日曜美術館」でも今日僕が聞いた藤田の肉声を放映予定との事です。

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# by maru33340 | 2018-09-08 20:22 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)

一日遅れの原節子忌

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昨日9月5日は3年前の2015年に95歳で逝去された昭和の大女優原節子さんの命日だった。

僕は大学生の頃から小津安二郎の映画が好きで、今はなき銀座の並木座まで友人とちょくちょく小津映画を観に行った。
(帰りは居酒屋で酒を飲み交わしながら「どうだい、最近」「いやぁ」「そうかい。まあ、一杯」と小津映画の台詞の口調で会話しながら泥酔するのが常だったと記憶する)

企業資料館に勤務するようになり、戦後最初の資生堂のポスターのモデルが原節子さんだったと知った時はまさに「運命の巡り合わせ」だと思った。

以来来館される方に館内のご案内をする際には必ず原節子さんの話をするけれど、もはや彼女の事を知る人も少なく年々反応が薄くなるのが淋しい。

もはや昭和は遠く、平成も残りわずかになりました。
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# by maru33340 | 2018-09-06 23:32 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)

清潔なモーツァルトのオペラを

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台風の影響で窓外にはまだ不穏な暴風雨が残る。

早めに帰宅し、食事を終えて、ふとモーツァルトのオペラ『コジ・ファン・トゥッテ』が聴きたくなり、スウィトナー指揮ベルリン・シュターツカペレによる演奏を聴き始めた。

スウィトナーの指揮は、少し小振りだけど安心して身を委ねられる。
あまり愛想はないけど、スタンドプレーのない、誠実で清潔なその音楽は、彼の人柄そのもののよう。
(我もまたかくありたし、等と思う)

いくつもある重唱も透明感に満ちていてとても美しい。

最近こういう音楽に心ひかれます。
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# by maru33340 | 2018-09-04 20:52 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)

「演奏会選びに失敗する」

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今日の昼間、来日中のあるピアニストの演奏会を聴きに出かけた。

未知のピアニストだったけど、国内某都市で数年前に開催されたピアノコンクールで優勝しているとの事で、ふと思い立ち当日券を買い求めた。
演目は、ハイドン、ドビュッシー、ブラームス。
ところが、最初のハイドンが何とも重たく、続くドビュッシーもまた音ばかり大きくちっともドビュッシーの音楽に聴こえない。
途中で帰ろうかと思ったけれど、もしかしてブラームスならこの重たく大きな音が生きるかも知れないと思ったのが間違いだった。
ただただ打楽器のようにピアノを叩きつける響きが重苦しく、途中で気持ちが悪くなってしまった。
長く演奏会を聴いてきたけどこんな経験は初めて。

帰宅して食欲もなくスープだけを飲み早々に横になり、口直しに、コレスニコフの弾くルイ・クープランのピアノ曲を聴く。
このアルバムは繊細で儚いほど美しく、聴き進むにつれ次第に耳が洗われるようで、ようやく人心地ついた。

ごく稀にはこんなこともありますね(*_*)
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# by maru33340 | 2018-09-02 21:37 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)

秋はブラームスから

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昨夜は激しい雷の音で何度か起こされ、今朝はまだ少し頭がぼんやりしている。
今朝も雷の音は遠くに聞こえ、空にもまだ不穏な気配が混じる。

今日から9月。

ふとブラームスのピアノ協奏曲が聴きたくなり、ゲルハルト・オピッツのピアノ、コリン・デイビス指揮バイエルン放送交響楽団によるブラームスピアノ協奏曲1番を聴き始めた。

2楽章の厚い弦の響きの中にオピッツの温もりのあるピアノの音がゆっくり入ってくる所で「ああ、もう秋がやってきたのだ」という感慨におそわれ少し泣きそうになった。
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# by maru33340 | 2018-09-01 08:16 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)

映画と原作

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先日観た映画『検察側の罪人』の原作を読了した。

面白かった。

映画と原作にはかなりの違いがある。
エンディングも大きく異なる。
詳しくは書けないけれど、本には映画にはない「救い」がある。
(映画を観て「凄い映画だけどその結末かあ。つらいなあ…」と感じた方は是非原作を読まれる事をお薦めします)

また、もし映画を先に観ようか、原作を先に読もうかとお悩みの方がいらしたら、僕は、まず映画を観てそれから原作を読まれる事をお薦めします。

(この映画に関しては)映画を観てから原作を読むと、映画化にする際にスタッフはどこをカットし、何を加えたのか、それは何故だったのか、とあれこれ考える楽しみがあります。
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# by maru33340 | 2018-08-31 08:05 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)

鰯雲とブラームス

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連日の(日中外に出れば焦げてしまいそうな)猛暑が続くけれど、今朝は空気に少し涼しい秋の気配が混じる。

空を見上げれば秋らしい鰯雲が広がる。

ほんとうの秋の到来を待ちながら、ふとブラームスの交響曲第三番が聴きたくなった。
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# by maru33340 | 2018-08-28 08:58 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)

音楽・本・映画などについての私的な感想


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