亡き友のために

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大学生時代、僕も在籍していたクラシック音楽を聴くサークルに、仏文学科に在籍していたS君という同学年の(ただし年齢は彼が少し上)友人がいた。

良く言えば個性的な、相手が先輩だろうがなんだろうが「自分はこう思う。わからない方がバカなんだ!」と出張するような男だったけれど、何故か僕とは気が合い、彼の住むマンションの最上階のオーディオルームで一緒にクラシック音楽を聴いた。

ヘビースモーカーの彼は、フランスの両巻き煙草「ゴロワーズ」を燻らしながら「『ペレアスとメリザンド』はアンゲルブレシュト指揮の演奏を聴かなくちゃ。他の演奏はゴミだよ」とか「デゾミエールの演奏を聴いたかい?あれは凄いよ」等と語る。

当時マーラー熱に浮かされていて、ようやくフォーレの音楽に目覚めフランス音楽を聴き始めたばかりの僕には、彼は同級生ながら、ずっと先を歩く先輩のようだった。

そんな、ほとんど人のことを誉めない彼が何かの文集に載った僕のつたない文章を読んで「君は文章を書いて生きていくべきだ」と呟いたのは今から40年近く前のこと。

大学を卒業してから彼とは一度も会っていなかったけれど、彼と共通の友人から彼が亡くなったとの知らせを受けた。

長く癌と闘っていたそうだ。

僕が今(そしてこれから)彼のために出来ることはなんだろうか…
# by maru33340 | 2018-11-11 18:56 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)

驚くべきミステリー『カササギ殺人事件』を読む

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今週は東へ西への新幹線の移動が続いたけれど、思ったより大変だと感じなかったのは、旅のお供にと持っていった英国製ミステリー『カササギ殺人事件』(アンソニー・ホロヴィッツ著)が時を忘れるほど面白かったから。

子どもの頃、面白い物語を読むと本が終わってしまうのが惜しくて、本の残りの厚さを何度も確かめ少し読むスピードを落としたりしたものだけど、この本は久しぶりにそんな思いになる本だった。

アガサ・クリスティを彷彿とさせる本編だけでも十分に面白いのに、作品の構造自体にあっと驚くような工夫がされている。

これ以上書くとこれから読もうとする方に申し訳ないので、解説の言葉を借りて一言だけ言うと「『カササギ殺人事件』は、現実の物語が虚構の物語を包含した(犯人あての物語の中に犯人あての物語が丸ごと一本入った)一作で二度謎解きの妙味を味わえる贅沢な作りのミステリー」になっている。

この遊び心に満ちた英国ミステリーの傑作はこれから年末にかけて数々の賞を受賞しそうです。
# by maru33340 | 2018-11-11 07:07 | お勧めの本 | Trackback | Comments(4)

浅田真央を超える逸材の登場に震える

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今日は休日出勤。

少し早めに帰宅しフィギュアスケートNHK杯女子フリーで紀平梨花の演技を初めて見る。
スピード、切れ味、表現力、技術…全て素晴らしい。
浅田真央を継ぎ・超える新たな天才の登場に鳥肌が立つ。

紀平の素顔はまだ幼さの残る16歳。

試合の結果はグランプリシリーズ初出場で高得点で初優勝。

同じコーチの宮原知子は2位。

演技を終えた宮原と紀平がインタビュー前にすれ違った時目も合わさなかった姿に、勝負というものの厳しさと残酷さを感じました。
# by maru33340 | 2018-11-10 19:16 | お勧めの本 | Trackback | Comments(3)

繰り返し聴きたい「四季」のこと

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京都出張から戻りジュリアーノ・カルミニョーラのヴァイオリンによるヴィヴァルディの「四季」を聴き始めた。

先日初めてカルミニョーラによるバッハの無伴奏ソナタ&パルティータを聴きとても素晴らしかったのでAmazonで頼んでいたアルバム。

聴き馴れたヴィヴァルディの「四季」という曲が、真新しい清んだ水によって洗われ新たに生まれ変わったような新鮮でみずみずしいとても美しい演奏。

特に「夏」の終楽章の嵐の表現の切れ味鋭い表現、「冬」の二楽章の緑葉樹の厚い緑の葉に積もった雪が、朝陽をうけて溶けキラキラと耀くような表情の美しさは、初めて聴く「四季」の姿でした。

これからも繰り返し聴く「四季」になりそうです。
# by maru33340 | 2018-11-08 21:14 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)

「文士」という生き方

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「文士」という言葉はもはや死語に近いのかも知れない。
それでも僕は(古い人間のせいか)その言葉や生き方に憧れがある。

堀田善衛という人の本も今の若い人はどれだけ読んでいるだろか?

かくいう僕も高校生の頃、父の本棚にあった堀田善衛の『ゴヤ』(全4巻)を途中まで読んで挫折したままだからとても堀田善衛を語る資格はない。

この『ただの文士 父堀田善衛のこと』という本は、彼の娘の堀田文子さんによる回想だけど、父との適度の距離感が良いし、堀田自身の文章の的確な引用により、生涯勉強を続けた飽くなき好奇心の固まりのような堀田善衛という作家の最良の入門書になっている。

再び腰を落ち着けて堀田善衛の『方丈記私記』や『ゴヤ』を読み返したくなりました。
# by maru33340 | 2018-11-06 07:57 | お勧めの本 | Trackback | Comments(6)

好きな絵のこと

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僕の部屋のカレンダーはコペンハーゲンをテーマにしたもの。

11月のこの肖像画はとても気に入っているけど僕には未知の画家による作品。

少し調べてみるとデンマークを代表するモダニストの画家ヴィルヘルム・ルンドストローム(1893―1950)による《ハネ・ヴィルヘルム・ハンスンの肖像》(1946年)という作品だった。

初めて見た時にセザンヌが彼の婦人を描いた作品を思い出したけれど、作者はブラックやピカソ、セザンヌの影響を受けてキュビスムの道を歩んだそう。

サイズは120×91㎝と大きく、今もモデルである彼女が暮らした部屋の壁に掛かっているとのこと。

鮮やかな黄色の服と平面的な背景のコントラストがリズミカルでとても気持ちの良い絵だと思います。
# by maru33340 | 2018-11-04 21:15 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)

季節のように生きる。

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映画『日々是好日』を見る。

これはとても気持ちの良い映画でした。

黒木華演じる普通の大学生がお茶を習うことを通じて様々な大切なことを頭ではなく体で学んでいく25年間を丁寧に描いていく。

彼女のお茶の先生役の樹木希林さんの演技が、飄々としながら時として深い叡知に満ちていて素晴らしい。

映画の中で黒木華が「日々是好日」と言う言葉が示す意味について語るこんな言葉が心に残ります。

「雨の日には雨の音を聴く。雪の日には雪を見て、夏には夏の暑さを、冬には身の切れるような寒さを。五感を使って、全身で、その瞬間を味わう。」

季節の中で過ぎてゆく日々の中の、一瞬一瞬にあるうつろいゆく美しさを、もっともっと大切に慈しんでいかなくては、と思います。
# by maru33340 | 2018-11-03 20:15 | お勧めの本 | Trackback | Comments(5)

ビル・エヴァンスの「ダニーボーイ」

秋が深まってくるとビル・エヴァンスのピアノが聴きたくなる。

昨夜聴いていたビル・エヴァンスへのトリビュートアルバムの最後の曲「ダニーボーイ」を聴きながら、エヴァンス本人の演奏が聴きたくなり1962年のピアノソロバージョンを聴き始めた。

最初は淡々と旋律を奏で、次第にいかにも彼らしいブルージーでjazzらしい即興が現れて自然に身体がリズムを取る。

人に聴かせるというより自分自身との対話のようなこの演奏のスタイルはどこかグレン・グールドのブラームスの間奏曲に似ているよう。

約10分の演奏を聴き終えると良いjazzを聴いた悦びに満たされ心身も少し緩んできます。


BILL EVANS "Danny Boy" (Londonderry Air) Piano solo. https://youtu.be/X5Sg0WGy9YA 
# by maru33340 | 2018-11-03 06:22 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)

平成も残すところ後半年になりました

朝晩ぐっと冷え込んできて昼間との寒暖の差が激しい。

明日からもう11月。

本屋では来年の手帳やカレンダーのコーナーが目立つようになってきて、いよいよ年の暮れも近いなあと思う。

テレビのニュースでは来年の天皇陛下の退位(平成の終わり)まで後半年だと伝えている。

誠に畏れ多いことだけど、僕も来年4月末で定年になるので陛下の退位と時を同じゅうする。

僕が生まれたのは陛下がご結婚された昭和34年4月だから、まさにお二人と同時代を生きてきたのだなあ…という感慨を新たにする。

自らの越し方行く末を想うには色々まだ早すぎるけれど、一日一日を(あまり日々の小さなことに煩わされることなく)おおらかに愉しく自分らしく過ごしていきたいなあ…などと思う今日この頃、だったりします。
# by maru33340 | 2018-10-31 20:28 | お勧めの本 | Trackback | Comments(6)

真摯で美しいバッハ

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昨日、神保町のササキレコードさんで入手したエレーヌ・グリモーによる「バッハVSバッハ・トランスクライブド」を聴く。

バッハの作品と編曲作品を調性を軸に編集したグリモーらしい意欲的なプログラム。

その演奏は彼女の瞳のように真摯で真っ直ぐな美しさに満ちている。

グリモーはバッハについてこんな風に語っている。

「バッハは河の中の島のような存在で、時代の潮流がどの方向に流れようとも束縛のない自由さと動揺することのない確固とした立場を保ち続けています。」

その言葉はグリモー自身の生き方をも語っているようです。
# by maru33340 | 2018-10-30 08:27 | お勧めの本 | Trackback | Comments(2)

音楽・本・映画などについての私的な感想


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